子どもたちの自発性や向上心を高め、実績を出す進学塾がある。
小学4年生から高校生までを対象とした進学塾「ひのき進学教室」。教室は、仙台市泉区の泉中央と長命ヶ丘に2教室。生徒らには「ひのき」の名で親しまれる。
(※2010年3月現在、泉中央教室、長命ヶ丘教室、八幡町教室、上杉教室の4教室)
新みやぎ模試で、ひのきの中3生は、全県平均より83.0点高い平均点を叩き出した
県内最大規模の新みやぎ模試で、昨年度「ひのき」の中3生は4ヶ月連続で成績を上げ続け、1月号は5教科で全県平均より83.0点高い平均点を叩き出した。「ひのき」の全生徒を対象にした平均点である。
トップ校にも高い合格実績を誇る。2008年度高校入試では、仙台二高に17名受験中16名合格。2教室のみの実績だ。1教室あたりで比較すると、その合格実績の高さがわかる。
県内でもトップクラスの高い学力と合格実績は、厳しい受験競争を想像させるが、そうではない。
中3夏から高3まで「ひのき」に通塾した稲村さん(宮城教育大学1年生)は、こう語る。「ひのきに来て、勉強がとても好きになりました。ひのきには、信頼が置けるとても熱心な先生と、励まし合える仲間がいたので、受験も苦痛ではありませんでした。ひのきは、第2の家族のような存在です」
「ひのき」が組織として結果を出し、地域の保護者や生徒から支持される理由を探った。
プロ講師による集団授業の様子
学習塾で、子どもを直接指導するのは講師である。講師の質で、授業の質は決まると言っても過言ではない。
「ひのきには、経験豊かな指導力のある先生たち、実績ある先生たちがいます。それは、間違いなく胸を張って言えること」と話すのは、塾長の齋藤誠さん。
学校・学習塾・予備校などで十分な指導経験をもつ講師や、有名塾の責任者等を勤めてきた講師など、錚々(そうそう)たる経歴の講師らが「ひのき」に集まる。さらに厳しい選考基準の下、講師は選考される。
「ひのき」が講師に求める質とは何か。
「技量だけでなく、指導に必要なのは、熱い思い。子どもたちの心を揺り動かすエネルギーです」
子どもは未知なる可能性を持っている。子どもの好奇心に如何に火をつけられるか。
「この先生についていければ、学力が上がるし、ものの見方、捉え方が広がると、子どもが信じてはじめて、子どものモチベーションは高められます。ひのきには、授業の技量だけでなく、好奇心に火をつけられる先生たちがたくさんいます」
講師それぞれの能力を発揮できる高い自由度が強みだ。「こちらがいちいち細かい指示を出さなくとも、子ども一人ひとりの動きを見据えて指導できるのが、プロ講師です。それが経験であり、講師としての資質や能力。それぞれの先生たちがいい授業を目指して、画一的にならず、最大の授業を行っています。それぞれ皆、個性があって、面白い集団です」
講師一人ひとりのカラーが融合し合い、「ひのき」をつくっている。
「塾に結果を出す仕組みが備わっているかを見てください」と力強く話す齋藤さん。個々の講師の技量は言うまでもなく、組織として結果を出すには、コンセプトを持ったコースやシステムが必要だ。
保護者や子ども達が学習塾に対して期待するものは、学力向上・志望校合格。その期待に「ひのき」はどのように応えるのか。
齋藤さんはこう力説する。「中1・中2も大切な学年だが、中学3年生は受験学年。希望の進路を叶えなければならない特別な学年です。受験学年への対応の仕方に、塾の姿勢がはっきりと顕れると思います」
夏期講習会80時間は、多くの塾より2倍〜3倍多い授業時間数だ
進学塾である「ひのき」の使命は、「全ての受験生の第一志望合格」。その姿勢が顕著に表れるのが、80時間講習の夏期講習会だ。
80時間の授業時間数は、多くの塾より2倍〜3倍多い。「仙台の多くの塾は、夏期講習に当てる授業時間数は、オプションを除き30〜40時間程度。しかしながら、入試に耐え得るには、5教科3学年分の内容を十分に学習する必要があります」。そのためには、どうしても80時間が必要であると齋藤さんは力説する。
中総体も終了し、受験勉強に備えるための最初で最後の長期休暇。「ここでどう努力するか、どう勉強するかで、9月以降の飛躍が決まるのです」
「80時間講習を乗り越えた子どもたちは、学力がつき、主体的な勉強ができるようになります。9月からは、自覚のある取組みができますので、学習の成果も出てきます。部活で言う大会が待ち遠しい、あのワクワク感ですよ。大変な大型講習を乗り越えたから、秋からやれるんだという自信と、受験生という自覚が同時に備わってくるのです」
夏期講習後、入試までの6ヶ月間は、授業時間が2倍近くになる。十分な学習の質と量を確保するためだ。
「数学ひとつ例にとっても、中3生が夏以降に学習する内容は、2次関数、相似、三平方の定理など受験で重視される重要単元ばかり。これらの単元を入試の水準まで掘り下げて指導するためには、十分な時間が必要です。また、2月の私立入試までに十分な問題演習をするためには、12月まで中学生の全学習内容を終わらせておく必要があります」
4月から7月までの中3生の授業時間は、中総体を控える生徒に配慮し、19:00〜21:20。夏期講習会後、9月以降の6ヶ月間は、正規授業の時間数を2倍近くに拡大。17:20〜22:00へと変わる。
自発的な居残り勉強の他に、学力不足の子どもに対しては、指名の補習。年明け以降は、毎週日曜日を開校して、子どもたちの学習を支えていく。
「はじめから、このような年間カリキュラムが組んであります。年度の途中で授業時間が変わるのは、珍しいと思います。小さい教室だからこそできるしくみです」と齋藤さん。
授業時間は約2倍になるが、授業料は5教科合計で月額6,000円の負担のみ。「これだけ授業時間を増やせば、普通なら1.5倍でもおかしくないのですが、そのご負担を保護者の方にお願いするわけにはいけません」
受験学年に対して、責任を持つ「ひのき」の姿勢がシステムや授業体制に顕れる。齋藤さんは力強く話す。「ご父兄には遠くから送迎して頂き、ご負担をおかけしています。物心両面に対し、我々はきっちりお応えしますので、よろしくお付き合い下さい」
受験学年以外のコースはどうか。
「中3で結果を出すためには、中1・中2も同様に大切な時期です。学力を伸ばすために、小学生や中学生での指導も大切になってきます」
学力とは、単なる知識の羅列や関連性を持たない知識の集合体ではない。子ども達の道は、小学・中学・高校・大学・社会へとつながっている。「学力も将来の発展性を見据えたものでなければなりません」
例えば特徴的なのが、中学入学を間近に控えた小学6年生のコース。10月までに6年生の内容を終了。11月〜12月の2ヶ月間は、小学校6学年分の総復習を行う「小学生完成コース」。1月〜3月の3ヶ月間は、中学校の先取り学習を行う「中学英数先行講座」を実施。中学入学時からの成績上位スタートを目指す。
仙台独特の地域事情もある。仙台では、中学入試より高校入試の需要が高い。「希望する大学へとつなげていくために、よりよい高校の選択をご父兄は希望されています」
中学校入学前に、中学での飛躍に必要な小学校の内容を総復習することで、中学での確実な伸びへとつなげ、高校受験へ備える。「大きな選択肢の中で希望する道が叶えれるよう、完成コースには、飛躍を支えるという意味があるのです」
また中1生や中2生には、通常授業以外にも、定期テスト対策を中心に、年間30〜40時間の無料講習を行っている。
充実感を得るときは「志望校判定や点数を上げられたとき」と話すのは、講師の浅倉康晴さん。
「子どもができるようになった顔を見て嬉しい、と言う方もいますが、それは塾の先生としては当たり前のこと。子どもの成績を上げるのが仕事。それが結果として出てくれるとやはり嬉しいです」と話す。
「ただ、将来を担う子どもたちを預かっている、大きな責任を感じながら教壇に立っています。心掛けるのは、子どもたちの持っている能力を最大限に引き出すことです」。可能な限り高い水準を目指したい、と言う。
生来子ども達には知的好奇心がある。新しいものを見て興味を湧かせることは自然なこと。中学生でも、可能ならば高校生の内容まで踏み込む。「知識の暗記ではなく、なぜそうなるのかを、なるべく噛み砕いて説明しています。『こういう解き方もあるんだよ』と説明すると、子ども達は『へ〜』と言いながら、有効ならばすぐに吸収してくれます」
生徒と講師の信頼関係がなければ、生徒はついて来ない。「あくまで教育は人と人。人間関係が円滑でないと、いくら良いことを言っても、右から左に情報が流れるだけです。土台としての人間関係がしっかりしているので、生徒も反応してくれるのです」
県内トップクラスの実績の基盤に、信頼関係がある。そして勉強の主体は、子ども達だ。「この実績は、子ども達が頑張って勉強した結果です。塾のお蔭で成績が上がったとは言いません。子ども達が勝ち取った結果です」
強制的に勉強させているわけではない。「子どもたちは、がんがん勉強をしています。好き好んで、鉢巻をしている子どももいます。間違って悔し泣きする子もいるんですよ。自発的に子ども達が一生懸命やるのが、ひのきのいいところだと思います」
◎
談笑する講師と生徒ら
「ひのき」の教室では、生徒と講師が気軽に話す場面をよく見かける。
塾長の齋藤さんは、「子どもたちが授業に来て、“はい、さよなら”では、あまりにも無機質でしょう」と言う。「無配慮な先生だったら、嫌いな子や出来ない子には声をかけないでいる場合もあるかもしれません。でも、それはあまりにも可愛そうです。あまりにも、勉強だけでは寂しい。やはり人間として、存在を忘れられるほど、寂しいものはないですから」。
会話を通さなければ、関係性が醸成するのは難しい。「心がつながっているから、一緒に頑張れます。急に醸成するのは難しいですから、普段から、つくっていく必要があるのです」。
さりげない会話のひとつひとつが、講師と生徒の信頼関係を醸成させていく。
「ひのきの先生たちは皆、子どもたちのことを好きで、よく受け入れてくれるから、子どもたちも慕ってくれています。私がこんなことを言わなくても、自然にできるメンバーばかりです」と齋藤さん。
齋藤さんと講師の信頼関係、講師と生徒の信頼関係。「ひのき」が県内トップクラスの実績を誇り、保護者・生徒から指示される理由が見えてきた。
ある保護者からの手紙が、「ひのき」の姿勢を端的に現す。
「私は塾を、自分で勉強する能力のある者が通うような場所としては認識していませんでした。
しかしながら、団体スポーツと同じように、苦楽をともにする仲間、指導者がいることで、辛い受験競争に際して、辛い中にも精神的なゆとりと安心感が持てたようです。その点が貴塾は特に抜きん出て優れていると思います。
そのため、生徒と先生および生徒同士に学習塾とは割り切れないような不思議な一体感があり、そのことがまだ精神的には未熟な中学生においては何にも勝る力になるのではないかと思います。
やはり、進学塾とはいっても最終的には人と人とのつきあいですので、事務的に割り切れるものではないとは思いますが、私の塾に対する認識を改めざるを得ませんでした」
「学習指導中心にしっかりとやっておりますが、人と人とのつながりを感じて頂けることが多かったとは、とても有難いことです」と齋藤さん。
目を細めながら生徒の話をする斉藤さん。
「ひのきだけですよ、自分を出せるのは。高校という新しい場で、私は変われるかも知れない。一生懸命、新しい自分をつくっていけそうです。ある子がそう打ち明けてくれたこともありました。嬉しかったんですよ、本当に」と齋藤さんは目を細める。
「うちの子達は、自慢の子ども達です。本当に自分たちで頑張っていける子ども達です。帰れと言っても、帰らない子が多いんですよ。それぞれ先輩たちの後姿を見ているので、生徒を中心に頑張っていく土壌があります。ひのきの財産は、子ども達。素晴らしい子ども達を預けて頂いたお父さん・お母さん方に感謝しています」
学習指導の「高度な専門家集団」たることを目指す、地道な努力。そのひとつひとつが信頼関係を築き、目に見える結果として顕れる。無数に積み重ねられた目には見えない信頼関係が、「ひのき」の今をつくっていた。
文責:大草芳江